*ぬるいですがBL描写で始まりますので、
腐描写がおいやな方は2ページ目からお読みください。
間近に見やれば、その肌のあちこちに
引き攣れたような火傷の痕や、切創を塞いだのだろう縫い跡など、
随分と痛々しい古傷が少なくはなく散り残る身だが。
それでもその彼へと思い浮かぶものといや、
伸びやかで瑞々しいという、無垢で清い印象しか湧かぬ。
屈託なく笑う無邪気さや、行動的で闊達なところから、
お日様みたいなと比喩される、
それは明るく目映い、間違いなく光の側の子で。
自分なんてと卑屈な物言いをすることもあるが、
それでも正しさへ背を向けられぬ、
いつかもっと経験を積み、様々に知恵がついてもそれでもやはり、
正道を尊いとするだろう融通の利かぬ子であり。
絶望に打ちのめされても挫折にうずくまっても、
それでも歯を食いしばって、自力で立ち上がって歩き出すよな、
そういう芯の強い子で。
“それが嵩じて、妙なことへ頑固でもあるけどな。”
そんな真っ当な子が、こっちへ転がって来ちゃあいけないと、
どれほど説いたか知れぬというに。
自分のような血まみれの存在へ親しんではならぬと、
結構な頻度で 牽制もしたはずだってのに。
自分の目で見たものしか信じない、なんて
そりゃあ恰好のいい、しかしお莫迦なことを言いきり。
中也の傍に居たいのだと、結んだよしみをそのまま大事にしたいのだと、
言って聞かぬまま、朗らかに懐いてくることを止めようとせず。
気がつけば、こちらからこそ離しがたいと切望する存在にまで馴染み深くなっており。
「…んぅ。」
健やかな骨格にしなやかにまといついた肉置きが、
伸びやかな背条のよじれへ添うて、それは艶めかしく蠢く。
なめらかな肌は甘い熱を帯び、
ほのかに汗をまとうているためか、
組み伏せられた彼の下、
白い敷布が引っ張られてはよじれ引きつり、
細かいしわとなってさざ波のような陰影を生む。
衣紋を順々に剥いでって寝台へと組み伏せた身の、
若々しくもしっとりと、少女のそれのよにきめの細かい肌は、
触れた手へそちらから吸いついてくるようでもあって。
迎え入れたこちらの懐、胸元へ凹凸ぴったりくっついたなら、
そのまま二人は一つになれるかもしれぬという、
下らぬながらも切なる懊悩を掻き立てては誘うものだから。
肌と肌を擦り合わせ、それだけでも落ち着かずに震えを起こす愛し子の耳元へ、
これ以上はなかろう愛情こめて、唯一無二の呪文を囁く。
「あつし…。」
「んん……。///////」
常には伸びやかな声が、今は低められての甘い響きで名を呼ばれ。
声にかそれとも、込められた深くて甘い情に痺れてか、
中也が身を重ねたまま、その頬を伏せている薄い肩がふるりと震えて。
その先の手がまだ子供のような不器用さで、
指が触れていた辺りの敷布のしわをしゃにむに掴み締め。
いやいやとかぶりを振る所作が何とも愛らしく、なのに扇情的でもあって。
掻き乱された淡色の髪の狭間から覗く、いかにも美味そうなうなじへ、
ぺろりと舐めた自身の口許うずめ、容赦なく吸いついた中也である。
このように肌と肌を触れ合わせるよになったのは、ひょんな騒動が切っ掛けであり。
いずれはこういう間柄になれればと思っちゃあいたが、
それでも相手の年齢を慮り、まだまだ早いと自身に言い聞かせ、
それなりに順を踏み、じりじり間を詰めていたものが。
○○しないと出られない部屋、ではないが、
媚薬もどきにその身を苛まれていた少年の、
思いもよらぬ強制的な劣情、
飛ばさせてやらねばという状況に手を貸すこととなり。
(罪なほどに甘い、参照)
敦の側でも中也の側でも“棚ぼただ”と感じたほどの呆気なさ、
一気に“さあどうぞ”と、致す機会が転がり込んできたようなもの。
そうして秘すべきところへ触れ合ってしまった以上、
なし崩しというわけじゃあないけれど、
それまではささやかなそれで十分だった
接吻や抱擁といった触れ合いや睦み合いへ、
相手を感じたい貪りたいという情愛への欲求に歯止めが効かなくなっており。
より深く踏み込んで、勿論のこと自分も自分を曝け出して、
互いを暴き合って感じ合って、受け入れたりそそいだり、
熱くて濃密な愛交の刻を持てるよになったはいいが、
“…まだまだ初心者だもんな。”
じかに触れる、接するとなると…そこはやはり。
恥じらいやら含羞みやら、
はたまた男である身で組み敷かれることへのささやかな抵抗感とやらやらが、
総身を巡っての生々しき情感として、一気に実感されるせいだろう。
まだ少し幼い色の残るお顔の中、
朝焼け色した眼差しが宙を泳いでの、
明後日の方を見たりもする含羞みぶりが何とも愛らしく。
そこへと、慣れた手際で小さな顎を捕まえられて、
悪戯っぽい表情を染ませた端正なお顔が寄って来、
「あ…。」
触れ合ったそのまま、
角度を丁度いいようにと噛み合わさせる勝手というか呼吸は、
気がつきゃ既に得ている身だ。
柔らかで、ほのかにたばこの匂いがする唇と、
慣れればそれもまた案外と甘くて気持ちいい、
相手から差し出される舌と舌との密な接触と。
それらへ深々と翻弄される隙を突き、
男臭い熱が覆いかぶさり、組み敷かれての覗き込まれると。
呼吸も速まっての、頬が熱くなったり、何とはなくの戸惑ったりに拍車がかかり、
「…っ。」
温かで乾いた感触のする、だが、堅くて剛い手や指先が。
他人が触れることなどまずはない素肌へと、
じかに触れての其処から広がるは、淡く灼くよな淫靡な感覚。
肩へと伏せられてのすべり降り、
着衣の衿元を肩口から二の腕へ、押し下げ押し広げようとする手のひらや。
相手はまだ羽織ったままでいるシャツの、
それでも大きくはだけて下がった縁が、こちらの胸へと掠める感触へ。
目には見えない炎が立っての、血脈の泡立ちを肌の下へと感じ。
細い顎を縁取るおとがいへ、そおと口づけを落とされたのへ、ひくりと震えてしまったものだから。
「…?」
零れた吐息の震えに気づいたか、そろりと身を浮かせての手を止めて。
睦み自体の経験が少ない彼のこと、
まだまだ当分は手のかかる、戸惑いやら躊躇やらが出るのは致し方がない。
あえぐような呼吸をするのへと付き合っての、お預けのまま、
和んだ眼差しで見やっていれば、
「…だ、」
「んん?」
もう、だいじょうぶです、と。
真っ赤になって懸命に告げるのが、何とも言えずの愛らしくて萌える。
あんまり興奮させては虎の耳とか尻尾が出るやも知れない。
だって今宵は、あの日と同じく“スーパームーン”とかいう宵らしいから…。
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